羽束山 ~初日の出登山の山~
■羽束山(はつかやま、524m)
羽束山は「初日の出登山」で有名ですが、四季を通じて楽しめる山です。フラワータウンから見ると半円形の穏やかな山容ですが、六甲最高峰側から見ると、二等辺三角形に近い鋭峰が聳え立ち、神様が降臨されるにふさわしい姿です。
新古今和歌集に羽束山を詠んだ大江匡房の次の和歌があります。大江匡房が羽束にいた源頼綱に送った和歌で、源頼綱は多田源氏の一族なので羽束に住んでいたのかもしれません。
「秋はつる はつかの山のさびしきに 有明の月を 誰と見るらん」
★関心をお持ちの方は、次のサイトの末尾近くの「雑」の項目をご覧ください。
大江匡房 千人万首
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/masahusa.html
■登山道
登山は、山麓の三田市香下(かした)の香下寺から山上の羽束神社・観音堂への整備された参道を往復するか、三田市木器(こうづき)の集落へ抜けるのが一般的です。
一方では、羽束山は里山なので、山中に多くの道があります。参道ほどには整備されていないので、倒木があったり、草が茂っていたり、通過に注意が必要であったりします。これらの道を歩くことも可能です。
里山の登山道は急斜面の直登が多いです。例えば、北アルプスの三大急登として有名な燕岳(つばくろだけ、2763m)の合戦尾根があります。筆者は初めて登ったとき、急登に期待しながら登ったのですが、いっこうに急登が現れません。そのうちに稜線の山小屋に着いてしまいました。合戦尾根は地形図では急傾斜であっても、登山道はジグザグになっていたり、足を置きやすいようにステップが切ってあります。里山は急斜面を直登しますので、靴底の傾斜は合戦尾根よりも急なのです。
里山の急斜面を上り下りする場合は、軍手を着用し立木をつかんで安全に通過するようにします。
羽束山の登山道についてはガイドブックを見たり、ネット情報のGPS記録を参照するとわかりますが、参道以外を歩く場合は山慣れた人との同行をおすすめします。参道の往復だけであればスニーカーでも可能ですが、ケガの防止など、安全のためには登山装備で登ることがおすすめです。
■六丁峠
香下寺駐車場から東へ登ると尾根上の六丁峠に着きます。お地蔵様があります。
ここを右折し南へ、倒木の多い踏み跡を道なりに進むと甚五郎山(じんごろうやま、430m)の頂上に着きます。景色は樹木の間から少し見える程度です。
六丁峠を左折し、広い道を北へ進むと参道経由で鬱蒼とした樹林を通って羽束山頂に着きます。
六丁峠には、知らなければ気付かない場所に、次の岩尾根直登ルートの入口があります。
■岩尾根直登ルート
国土地理院発行の地形図には、香下寺駐車場から東へ登った地点(六丁峠)から、北へまっすぐ登る道が記載されています。これは岩尾根を登る道で、大岩や岩盤があることから筆者は便宜的に岩尾根直登ルートと呼んでいます。道標はないので、踏み跡を確認しながら登ります。急な個所は三点確保(三点支持)で登ります。岩の上にマムシがいることがあるので、岩に手を置くときは付近をよく確認します。
六丁峠から岩尾根直登ルートへの入口はわかりにくいですが、よく見ると、参道の左端から踏み跡が奥へ続いているのがわかります(落葉があるときはわかりにくい)。踏み跡の上は人間が通れるだけの空間が連続しているので注意すればわかります。地形図では道はほぼまっすぐですが、実際には90度曲がっている場所もあります。
岩尾根直登ルートは花が多く、花の季節に行くと大いに楽しめます。筆者が見た花は、モチツツジ、マルバアオダモです。ルートの途中から六甲山地、甚五郎山、羽束山周辺の景色が見えます。
頂上直下の大岩は掛かっているロープを補助にして登ります。登った地点の少し先の断崖の上に役行者らしい石像があります。石像はかなり風化しています。おそらく昔は修験者がこの山で修行していたのでしょう。さらに北へ進むと羽束神社があります。
【注意】当ルートは山歩きに慣れた人向きです。子どもだけで行くことがないように注意してください。また、下りには使用しない方が無難です。
■羽束山上からの展望
視程がよければ、西に三田のニュータウンから播州平野、その先の山並などが見えます。フラワータウン、ウッディタウン、旧市街地、さらにはイオンモール神戸北やプレミアムアウトレットも見えます。南にはゴルフ場が見え、その先には長大な六甲山地が横たわっています。
■参考写真(写真をクリックすると拡大表示できます。日付は撮影日です)
1-香下寺駐車場(2019/02/27)
正面奥に香下寺があります。手前右の建物はトイレです。
2-八王子神社(2014/12/19)
登山口にある神社です。
3-六丁峠(2019/02/27)
お地蔵様が鎮座する六丁峠。右の石碑前を右に行くと甚五郎山です。
4-甚五郎山(2019/02/27)
あまり展望はありません。
5-岩尾根直登ルート(2019/02/27)
ちょうど落葉の季節で踏み跡がわかりにくいです。
6-大岩(2019/02/27)
大岩を登ります。立って登りにくい場合は三点確保(三点支持)で登ります。
7-モチツツジ(2014/05/11)
8-大岩(2015/07/20)
このような大岩(大岩盤)が連続します。
9-モチツツジと岩(2014/05/11)
10-六甲山遠望(2015/07/20)
正面奥が六甲最高峰(931m)、その右のアンテナが多数見えるところが観光客が行く凌雲台です。
11-大岩(2015/07/20)
最後の大岩はロープを補助にして登ります。
12-役行者像(2019/02/27)
断崖の上に鎮座する修験道の開祖・役行者像です。
13-頂上部(2015/07/20)
「危険! 立入禁止」と書かれていますが、裏面は真っ白なので、岩尾根直登ルートを登って来ると何も気にせず、こちらへ来れます。子どもがこの立札の向こうへ行くと、断崖から落ちる恐れがあるので注意が必要です。
14-有馬富士(2015/07/20)
真ん中の三角形の山が有馬富士(374m)、右上の大きいなだらかな山が播州清水寺がある御嶽山(540mあまり)です。御嶽山の右上にうっすら見えている高峰は笠形山(かさがたやま、939m)です。
注:御嶽山は播州清水寺の山号です。地形図には山名も三角点・標高点もないので、正確な標高は不明です。この山の三角点は、標高462mの山腹にあります。寺の境内への三角点設置を避けたのかもしれません。
15-富士が丘方面(2014/05/11)
羽束山頂上から見た富士が丘の風景です(約3.6倍ズームで撮影)。左端にメロディーハイムの一部、その右上にディアコルモ、富士が丘高層住宅、真ん中下に富士小、右端に富士中などが見えています。
16-羽束神社(2014/05/11)
17-観音堂(2014/05/11)
=以上=