ツキノワグマの話
時々、ニュースなどでツキノワグマの出没が話題になることがあります。兵庫県にもツキノワグマは広く分布していますので、注意を喚起するために情報をまとめてみました。
ツキノワグマは雑食性で臆病な動物なので、人間を襲うことはまずありませんが、突然の遭遇などで自分や子どもを守るために人間を攻撃する場合があります。
■兵庫県ツキノワグマ目撃情報
次のサイトに兵庫県森林動物研究センターのツキノワグマ目撃情報があり、目撃の日時・市町がわかります。地図上の大まかな位置も表示できます。
★兵庫県ツキノワグマ目撃情報
https://wmi-hyogo.jp/sys/gyousei/kuma_list.aspx
*2009/01/01~2019/06/30の10年あまりの間には、兵庫県内で6699件の目撃があり、その範囲は兵庫県南部の一部を除くほぼ全域です。同じ期間の三田市での目撃件数は16件です。
*2019/01/01~06/30の半年間では、兵庫県内で114件の目撃があり、三田市では目撃なしです。
*異常出没があった2000年より後の三田市内の目撃件数は、2001年=2件、2002/2003年=0件、2004年=1件、2005年=0件、2006年=1件、2007年=2件、2008年=0件、2009年=1件、2010~2013年=0件、2014年=4件、2015年=2件、2016年=1件、2017年=7件、2018年=1件。
*2017年にはクマ1頭が南下しましたが、西宮市塩瀬町名塩の国道176号線付近で目撃された後は引き返して行ったようです。
【六甲山にクマ出没】
*2000年に1頭のツキノワグマが京都府南西部~大阪府北部~兵庫県南東部(北摂・六甲山地域)を動き回り、連日ニュースになりました。六甲山上のゴルフ場でも目撃されました。最終的にクマは京都府南西部へ帰って行きました。確か人的被害はなかったと思います。
*本件についてはネットに下記論文があり、地図にクマ目撃地点が記載されています。クマが広範囲に移動したことがわかります。
★論文タイトル: 異常出没したツキノワグマの移動地選択:2000年に六甲山を含む 兵庫県南東部,大阪府北部,京都府南西部で目撃された個体のGISによる解析(兵庫県立人と自然の博物館)
https://www.hitohaku.jp/publication/r-bulletin/No122001055.pdf
PDFの5頁に目撃地点の地図があります。
■ツキノワグマの出没について
*出没はコンスタントではなく、時期や場所にばらつきがあります。ある特定の個体が人里近くを動き回ると目撃件数が増えます。クマの食料である堅果類(ブナ、ミズナラ、コナラ、クリ、クヌギなど)の豊凶によっても大きく左右されます。
*非常に大雑把に言えば、兵庫県南東部の中国自動車道以北では、クマ出没の可能性があります。2019/03/17には宝塚市山手台の住宅地付近で目撃されましたが、中山連山の稜線よりも南側でした。
*最近の三田市では2018/07/17に小柿地区で目撃情報がありました。
*クマは兵庫県内だけでなく、近畿圏の多くの地域に生息していますので注意は必要です。
■クマに関する注意事項
兵庫県のサイトに注意事項が記載されています。
★ツキノワグマによる人身事故防止について
https://web.pref.hyogo.lg.jp/nk27/hw24_000000018.html
人身事故が発生していること、最近は個体が増加していること、行動範囲が拡大していることなどが記載されています。
■登山での注意事項
*一般的には、鈴やラジオなどの音の出るものを携行し、単独登山は避けるようにという注意が多いです。もし遭遇した場合は、背中を見せずに静かに後退するのがよいとされています。
*山中でクマに遭遇するケースは、山菜採りの人はクマの餌場へ行くので比較的多いが、登山者は少ないと言われています。
*万一、襲われた場合に実効性の高い防御方法としては、熊撃退スプレー携行(後述)があります。
【乗鞍岳畳平駐車場でのクマ襲撃事故】
*2009/09/19に岐阜県高山市の乗鞍岳畳平駐車場で猛り狂うクマに襲われ、男女9人が怪我をし、うち男性4人が重傷という事故が発生しました。このケースでは何らかの理由でクマがパニックに陥ったようです。
*最終的には、駆けつけた地元猟友会員によってクマは射殺されました。
*筆者が不審に思ったのは、クマ生息地の真っ只中でありながら、登山者・観光客・現地の施設等が熊撃退スプレーを持っていなかったことです。過去数十年間にクマによる事故はなかったということが理由でした。
★ クマが観光客を襲った…負傷者多数の「乗鞍岳バスターミナル襲撃事件」の教訓
クマが観光客を襲った…負傷者多数の「乗鞍岳バスターミナル襲撃事件」の教訓(羽根田 治) | 現代ビジネス | 講談社(1/6) (gendai.media)
【クマ撃退の武勇談】
*過去にクマを撃退したケースとして下記新聞記事がありました。
・空手の先生がクマの目を指で突いてつぶしたところ、クマが逃げて行った。
・柔道の巴投げの要領でクマを投げ飛ばしたら逃げて行った。この人は高齢者で柔道の心得はないが、以前にも同じ方法でクマを撃退したとのことです。
・女性が登山靴の靴底でクマの鼻面を思い切り蹴とばしたら逃げて行った。
・奈良県の大峰山脈で大峯千日回峰行を満行した塩沼亮潤師の著書には、修行中にクマに遭遇したが金剛杖を投げつけたら逃げたと記載されています。
■熊撃退スプレー
*向かって来るクマを撃退するには、銃で撃つか、熊撃退スプレーを噴射することが有効であると思います。日本では銃は免許がないと持てないので、一般的には熊撃退スプレーがよさそうです。
*熊撃退スプレーは米国で開発された「クマ対策用唐辛子スプレー」で、日本のツキノワグマ、ヒグマにも有効であることが実証済みです。眼や鼻に噴射を受けたクマはしばらく動けなくなります。冒険家の大場満郎さんも北極探検の際にホッキョクグマに使用しています。
*熊撃退スプレーは次のような短所があります。
・クマに突然遭遇した場合に落ち着いて噴射できるか(噴射距離は数メートル)?
・風上に向かって噴射すると人間も被害を受ける恐れがある。
★元祖・熊撃退スプレー 「カウンターアソールト」
http://outback.cup.com/counter_assault.html
=以上=