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2022年 9月 29日 木曜日

歩楽吟(ほらくぎん) ~越前の歌人・橘曙覧をまねて~


投稿者:ささえあいふじ

橘曙覧(たちばなのあけみ)は江戸時代末期の越前の歌人・国学者で、その作品である独楽吟(どくらくぎん)52首からはつつましいながらも妻子を愛し精神的にゆったりした生活を送った様子がしのばれます。

 

平成6年6月13日、天皇皇后(現・上皇上皇后)両陛下がご訪米された際の歓迎スピーチにおいて、ビル・クリントン米国大統領が橘曙覧の「独楽吟」の中の一首「たのしみは朝おきいでて昨日まで 無かりし花の咲ける見るとき」を引用して話題になりました。

 

 

福井市橘曙覧記念文学館HPを見ると独楽吟全部を参照できますが、その中には歩くことに関して次の2首があります。

・たのしみは空暖かにうち晴れし 春秋の日に出でありく時

・たのしみは意(こころ)にかなふ山水の あたりしづかに見てありくとき

 

冬に歩く和歌がないのは、越前という雪が多く寒さ厳しい土地に住んだ橘曙覧は、おそらく冬に出歩くことを喜ばなかったからでしょう。

兵庫県南部に住む筆者は、四季を通じて出歩くことを楽しんでいます。

そこで、独楽吟の「たのしみは・・・・・とき」という形式をまねて、歩楽吟(ほらくぎん)なるものを作ってみました。

 

 

【歩楽吟(春の部)】

・たのしみは木々の芽吹きを早春の 野山に入り訪ね見るとき

・たのしみは雪置く峰と桜花 湖水に映える景色見るとき

・たのしみはスミレタンポポレンゲ(菫・蒲公英・蓮華)咲き ヒバリさえずる野辺歩むとき

・たのしみはツツジ群れ咲き空晴れて ウグイスの鳴く山路行くとき

・たのしみは桜並木の花明かり おぼろ月夜の道歩くとき

 

・たのしみは桜吹雪の山の上 友と語らい昼餉とるとき

・たのしみは古(いにしえ)偲ぶ野田の藤 ゆれる藤波求め行くとき

・たのしみはカタクリの花開く野に ギフチョウ舞うを眺めいるとき

 

 

【歩楽吟(夏の部)】

・たのしみは若葉目に染む五月晴 ホトトギス鳴く山歩くとき

・たのしみは青葉若葉の滝道を 渓流見つつたどり行くとき

・たのしみは薄桃色の岩鏡(いわかがみ) 一面に咲く山路行くとき

・たのしみは丹精込めたバラの花 咲き乱れるをめでて行くとき

・たのしみは山ふところの岩清水 手に汲み喉をうるおしたとき

 

・たのしみは梅花藻(ばいかも)揺れる清流の 泉を訪ね水を飲むとき

・たのしみは色さまざまなアジサイの 無数に咲くを見つつ行くとき

・たのしみは田の面をわたる青田波 清しき波の行方見るとき

・たのしみは緑滴る大峰の 千古の森を通り行くとき

・たのしみは険しき山路登り来て 天女花(おおやまれんげ)匂い立つとき

 

・たのしみは天より落ちる大滝を 飛沫(しぶき)を受けて仰ぎ見るとき

・たのしみはお花畑に咲き誇る 高嶺の花に巡りあうとき

・たのしみは山に登りて遠くより 渡り来たれる蝶を見るとき

・たのしみは都会の森の蝉時雨 ここを先途と鳴くを聞くとき

・たのしみは汗かき登る山道に 木陰をわたる風のあるとき

 

・たのしみは一千丈の頂きで 一望千里見渡せるとき

・たのしみは夏なお残る雪渓を 青空の下踏みしめるとき

・たのしみは富士山頂に登り立ち 日本一を実感のとき

・たのしみは満天の星天の川 深山の宿で空仰ぐとき

・たのしみは山の夜明けを待ち望み 空雲染める日の出見るとき

 

・たのしみはササユリの花求めつつ 緑の山を訪ね行くとき

・たのしみはミサゴ羽ばたく池の辺を カメラ片手に歩み行くとき

 

 

【歩楽吟(秋の部)】

・たのしみはすだく虫の音聞きながら 名月照らす道を行くとき

・たのしみはハギオミナエシキキョウ(萩・女郎花・桔梗)咲き トンボ群れ飛ぶ山路行くとき

・たのしみは青空高くそびえ立つ 大岩壁に紅葉見るとき

・たのしみは見渡す限り銀の波 ススキ分けつつ野山行くとき

・たのしみは黄金波打つ里の秋 案山子(かかし)見ながら稲田行くとき

 

・たのしみは光に映える照紅葉 色のトンネル歩み行くとき

・たのしみは彼岸の野辺の曼珠沙華 朱色に染まる道を行くとき

・たのしみは柿の実たわわ秋晴の 里の小道を散歩するとき

・たのしみは休耕田のコスモスの 花また花の中を行くとき

・たのしみは気流に乗りて高く舞い 鷹の渡るを仰ぎ見るとき

 

・たのしみは高く澄みたる大空に パラグライダー飛ぶを見るとき

・たのしみは遥かに続く縦走路 歩きに歩き踏破したとき

・たのしみは真っ暗闇の山路来て 光あふれる夜景見るとき

・たのしみは太鼓の響き秋祭 散歩の足を止めて見るとき

・たのしみは鴨渡り来て池の面に 群れる姿を眺め行くとき

 

 

【歩楽吟(冬の部)】

・たのしみは寒風すさび夜気凍る 中を悠然歩み行くとき

・たのしみは凛たる冷気身にまとい 雪の野山に出で歩くとき

・たのしみは雪積む山に登り立ち 樹氷輝く尾根歩くとき

・たのしみは四方の雪嶺眺めつつ ホットコーヒー友と飲むとき

・たのしみは白一面のふかふかの 新雪踏んで跡つけるとき

 

・たのしみは雪の野山に動物の 足跡見つけ眺め入るとき

・たのしみは落葉散り敷く山道を 落葉踏み踏み進み行くとき

 

 

★★橘曙覧・旧跡 福井県福井市★★

 

福井市に現存する橘曙覧の旧跡をご紹介します(2015/03/17撮影)。

 

①黄金舎跡

・福井市の足羽山(あすわやま)の登り口にある橘曙覧の旧居・黄金舎(こがねのや)跡です。

・現在、跡地は福井市橘曙覧記念文学館になっています。

福井市橘曙覧記念文学館 (fukui-rekimachi.jp)

★上記サイトに、橘曙覧の紹介、年譜、独楽吟52首などが掲載されています。

 

②黄金舎跡の石碑

 

③黄金舎跡の説明板

 

④橘曙覧生家跡

こまちなか観光MAP ~No54  橘曙覧生誕地碑~ (fcci.or.jp)

 

⑤橘曙覧生家跡の説明板

 

⑥橘曙覧の草庵・藁屋(わらや)跡

・1868年8月28日に57歳で没するまで家族と共にここに住みました。

・幕末に越前藩主・松平春嶽候が藁屋を訪れましたが、当時は藩主が庶民宅を訪れることは極めて稀でした。

こまちなか観光MAP ~No42  橘曙覧藁屋跡~ (fcci.or.jp)

 

 

【藁屋跡の石碑その他】

⑦「橘曙覧の宅跡」の石碑

 

⑧藁屋跡

・右端が袖干の井と説明板です。

 

⑨「袖干の井」の説明板

 

⑩橘曙覧の歌碑

・膝いるゝばかりもあらぬ艸屋を 竹にとられて身をすぼめをり

 

 

【白山】

⑪福井市橘曙覧記念文学館のテラスから見た白山

・中央左の小さいクレーンの向こうが加賀の白山で、右のピークが最高峰の御前峰(2702m)、その左が大汝峰(2684m)です。

・中央右の台形の山は別山(2399m)です。

・中央は2015年当時に建設中の福井駅西口再開発ビル「ハピリン」です。ハピリンは2016年4月に開業しています。

=以上=